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真夜中コラム 第18夜 30本塁打が一人もいない──NPBとMLBの勝利観の違い

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真夜中コラム 第18夜 30本塁打が一人もいない──NPBとMLBの勝利観の違い

30本塁打が一人もいない──NPBとMLBの勝利観の違い

NPBとMLBって同じ野球のはずなのに、勝ち方の理想像がどうも噛み合わない。今日はその噛み合わなさを、海外ファンのコメントを並べて考えてみたい。

30本塁打が一人もいないチームが強いという事実

ブルージェイズがゲレーロJr.のあの折れバット打で盛り上がった記事のコメント欄に、こんなのがあった。

ゲレーロJr.が来年以降もっと良くなれば、チームの未来が楽しみになりそうだな。岡本も来年はもっと馴染むだろうし、あと一人戦力が必要だね。今のメジャーで30本塁打打てるのが一人しかいないチームが勝てるわけないだろ。

If Guerrero Jr. improves next year and beyond, I’m starting to feel excited about the future. Okamoto should get more comfortable next year too, and we really just need one more player. There’s no way a team with only one guy hitting 30 homers can wi

岡本和真を擁するブルージェイズについての話なんだけど、この「30本打てるのが一人しかいないチームは勝てない」って発想、めちゃくちゃMLB的だなと思う。個の長打力の頭数がそのままチームの強さの尺度になってる。

でも同じコメント欄で、すぐさま反論が来てるのが面白いところで。

ブルワーズは30本塁打打者が一人もいないのに、最高の成績じゃん…

Brewers dont have a single 30 HR player but they have the best record…

これだよ。これが言いたかった。30本打てる男が一人もいないのに勝ってるチームがあるって、MLBの中にもちゃんとこういう視点を持ってる人がいる。ただ主流ではないんだよな、たぶん。長打を並べて殴り合う野球の方が「MLBらしい」とされがちで、こっちの反論は少数派の声として埋もれていく感じがある。

NPBを見てきた人間からすると、ブルワーズ型の勝ち方の方がむしろ馴染みがある。一人がホームラン30本打つより、9人全員が状況に応じた仕事をこなす方が信用できる。これは昔から変わらない持論で、たぶんこの先も変わらない。

50-50と、誰も見てない一歩目の話

大谷翔平の50-50を巡る議論も、根っこは同じ話だと思う。過去の40-40達成者との比較で盛り上がってた記事に、こういうのがあった。

大谷の50-50は史上最高のシーズンの一つだ。リハビリ中で万全じゃない負傷投手がそれを成し遂げたこと、さらには首位打者にあと4毛差で三冠王に迫ったことの方に俺は感動してるよ。

Ohtani 50-50 is one of the greatest seasons, Im more impressed an injured Pitcher in rehab not fully healthy accomplished that, also almost won the triple crown, just four points of a batting title.

これに噛みついた人がいて、そこにまた反論が来て、最後にこういうコメントが残ってた。これが今回一番刺さった一文。

いや、ピッチャーとしてリハビリ中だったからこそ可能だったって意味だ。肩の怪我は打撃には影響しなかったから、二刀流で時間を割く代わりに打撃に100%集中できた。でもその時点では一刀流(DH)だから、PCAが45/40をやってのけて超一流のセンターを守る方が、50-50のDHよりはるかに価値があるよ。

no i mean it was only possible because he wasnt healthy as a pitcher. his pitching injury had no impact on his ability to hit, and he could 100% focus on hitting vs splitting time and focus. but he’s one dimensional at that point and so PCA going 45/

ここ、わかる。DHで打撃だけに集中して出した50-50より、外野の広いところを守りながら出した45/40の方が価値が高いという主張、一理ある。守備の負荷を背負いながら打つのと、打つことだけに全振りするのとでは、同じ数字でも意味合いが違う。イチローの頃だったらこの手の議論、そもそも起きなかった気がする。守備で稼ぐ価値がもっと当たり前に評価されてたというか。ただ、これも「知らんけど」の範囲は出ない。当時の空気を正確に語れるほど記録を精査したわけじゃないので。

それでもDHの数字だけで「史上最高」と言い切ってしまう空気には、素直に頷けないというのもわかる気がする。

「ブルペンで投げたい」と言った男

一方でNPB的な美学がそのままMLBファンに刺さってる例もある。佐々木朗希がチームの状況を見てブルペン登板を志願したという話が、向こうでかなり話題になってた。

「俺はブルペンで投げたいって言ったんだ」マジでクソかっこいいマインドだわ。最高かよ。

“I said I wanted to pitch out of the bullpen”Fucking STUD mindset right here. I love it

個人の登板数や役割よりチームの勝ち星を優先する、というこの発想。NPBだと別に驚くようなことでもなくて、先発が中継ぎに回るのも、抑えが前倒しで出るのも、割とよくある光景だと思う。それがMLBのファンの目には強烈な美談として映ってる。

朗希は精神的にすごく強い人だよ。数年前の大震災で個人的に辛い経験もしてるから、俺はいつも彼を応援するよ。今年のポストシーズンで早く本領を発揮して、相手にとって攻略不可能な存在になってほしいな。

Roki is a huge mental guy. Dude’s gone through some stuff in his personal life being affected by the great earthquake/tsunami a few years ago so I’ll always be rooting for him, hopefully he can find his footing quick in the postseason this year and b

この後のスレッドで「数年前」の時系列を巡って年配ファン同士が「2011年が15年前とか嘘だろ」「俺は数年前と言われたら2003〜2005年を思い浮かべる、年寄りだから」ってやり合ってるのも地味に好きなんだけど、それはまた別の話。

とにかく、佐々木朗希の役割優先の姿勢が「STUDマインド」と称賛される構図は、NPBの美学が輸出された珍しい成功例だと思う。数字よりチームの勝ちを、というのはこっちでは当たり前すぎて記事にもならないことなんだけど、向こうだとこれが特筆すべき人間性として扱われる。この温度差自体が面白い。

シャンパンの浴び方の話

今永昇太のポストシーズン進出祝いのシャンパンかけが盛り上がった時、こんな一言があった。

野球が彼の祝い方と同じくらい激しかったらいいのにね

I wish baseball would be as intense as his celebration

これ、皮肉として結構効いてる一文だと思う。プレー自体は淡々としてるのに、祝う時だけ全開になる。祝賀ムードに染まって全力ではしゃいでる姿を見て、向こうのファンが「試合中もそのテンションでいてくれ」って茶化してるわけで、これは単純に笑っていい場面。

結局、何が違うのか

分かってることを整理すると、MLBには「30本打てる男の頭数」を勝敗の尺度にする空気が根強くあって、それに対する少数の反論もちゃんと存在する。個人の数字を積み上げるDHの偉業を無条件に称える声がある一方で、守備の負荷まで含めて価値を測ろうとする声も確実にある。そして役割を犠牲にする姿勢は、NPBでは当たり前でもMLBだと際立って美談化される。

分からないのはここから先で、この差がどっちの野球観に収斂していくのか、あるいはずっと平行線のままなのか。大谷が二刀流を続けてる限り、この手の議論は毎年蒸し返されるんだろうし、正直それでいいと思ってる。決着がつかない議論の方が、野球を見てて楽しい。

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